期待値/100万円 vs. 日当取引回数のグラフ
前項「EA運用の方法」で、以下に示す4指標をEAの使用やロット数の設定に関する判断に使っていると説明しましたね。
- 単位金額当たりの期待値
- 単位期間当たりの取引回数
- 勝率
- 利損比
ここでは、実際にこれら指標をどのように使って判断に役立てているのかを説明します。
まずは単位金額当たりの期待値と単位期間当たりの取引回数についてです。この二つの指標を使って以下のようなグラフを作ります。 このグラフ自体は投稿記事「EAの成績-2018年6月末」に載せたものです。このグラフを例に引いて、その持つ意味や見方を解説していきましょう。
ea-performance-total-20180630グラフ上のポイントが示す対象
このグラフは2018年6月末時点でのフォワードテスト結果を基に、対象とするEAの単位金額当たりの期待値を横軸に、単位期間当たりの取引回数を縦軸にプロットしています。散布図といわれるグラフですね。期待値は資金量百万円当たりの数字であり、取引回数は一日当たりの数字です。
グラフ中、各EAは「all」、「60」、「30」と表示された3点を結ぶ折れ線で示されています。「all」で示される点は、 GogoJungleが公開しているフォワードテストのその時点(本グラフであれば2018年6月末時点)での全ての取引結果から百万円当たりの期待値と一日当たり取引回数を算出し、それをプロットしたものです。
「60」であれば最近60回の取引結果から百万円当たりの期待値と一日当たり取引回数を算出したものです。同様に「30」であれば最近30回の取引結果からの算出となります。ですから「30」や「60」で示されるポイントは、そのEAのより最近の状況を表しているわけです。
例えばFlashes_USDJPY(黄緑のキー)では、最近60回のフォワードテテスト取引を平均すると一回の取引利益が4,077円です。もちろん100万円の証拠金前提のロット数での話です。また取引の頻度はこの60回の平均で、1日当たりで0.6回でした。
グラフの意味するものは
IfRah(緑のキー)では「all」、「60」、「30」の何れにおいても期待値はマイナスです。取引を行うことで平均的には損失を被るとの結果を示しているわけです。さらに、「30」、「60」、「all」の順で期待値のマイナス幅が大きくなっています。このことからは、最近の成績が悪化していることがわかります。
事例を再度Flashes_USDJPYに戻しましょう。最近の60回の取引結果からは、 Flashes_USDJPYは一回の取引で4,077円の利益が期待でき、その取引が一日に0.6回実施されているわけです。従って一日当たりの期待利益は、4,077円/回×0.6回/日=2,446円/日となります。
これを一年間に引き写せば、2,446円/日×365日=892,790円となります。使用する資金百万円に対して年間の期待値がこの数字です。従って年利回りは、約90%ということになります。凄いですね。まっ、これはあくまでフォワードテスト直近60回の取引結果に基づく机上計算の結果です。
上記計算で示したように、単位金額当たりの期待値と単位期間当たりの取引回数という二つの指標を併せることで利回りが導出できたわけです。利回りは、言葉を換えれば単位金額及び単位期間当たりの期待利益ですから、導出できるのは当然ではあります。
単位金額及び単位期間当たりの期待利益
単位金額当たりの期待値と単位期間当たりの取引回数の関係を理解すれば、そのグラフ上で単位金額及び単位期間当たりの期待利益が同じとなる点を集めた曲線を描くことができます。グレーの実線で色分けされて描かれた3本の曲線がこれです。薄いグレーから順に、資金百万円に対する一週間当たりの期待利益2,000円、5,000円、10,000円を表します。
地図に描かれた等高線みたいですね。この等高線をあと3本、破線で加えたグラフを以下に示します。この破線3本は、それぞれ資金百万円に対する一週間当たりの期待利益17,000円、26,000円、38,000円に該当します。
ea-performance-total-20180630-2ridai_EURUSA(黄土色のキー)では、「30」と「60」がグラフ上の原点の位置にきています(2点が重なっています)。これはフォワードテストの取引回数が30回に満たないことによる作図上の都合ですので、この2点は無視して下さい。等高線を描くことで明らかになりますが、ridai_EURUSAの「all」は38,000円ラインの近くに位置し、期待値(もしくは利回り)が非常にいいことがわかります(計算すると、なんと年利回り約190%です)。
EAの性格の違いを明確化
利回りに相当する単位金額及び単位期間当たりの期待利益、すなわちEAの成績はどの等高線の上にあるかで一目瞭然となります。同じ成績であっても、その成績の達成が期待値の大きさによるものなのか、それとも取引回数の多さによるものなのか、はたまた両者のバランスによるものなのか、この違いがグラフから明確にわかります。
この点が、このグラフを作る最大のメリットと考えています。運用するEAの性格を異なるものとすることで収益曲線の振れ幅を少なくできるのではないか、前項「EA運用の方法」でこう書きました。EAを購入する限りは、その中身はブラックボックスです。そんな中、フォワードテストの取引結果は確かな事実といっていいでしょう。その確かな事実からEAの性格の違いを明確化するわけです。
性格の違うEAを複数運用することで取引の分散を図る。それを可能とするポートフォリオの構築を目指す私にとっては、単位金額当たりの期待値と単位期間当たりの取引回数を指標として用いるここで紹介した方法は、とても有効な判断ツールになっています。