勝率 vs. 利損比のグラフ
さて、次は残りの二つの指標、勝率と利損比どのように役立てているのかを説明します。これらを使って、以下のようなりグラフを作ります。示したグラフ自体は、投稿記事「EAの成績-2018年6月末」に載せたものと同一です。
このグラフを例に、その持つ意味や見方を解説していきますね。前項「指標-期待値と取引回数」での説明と似た部分も多くあります。ただ、グラフの意味するところは異なるので、最後まで読んで下さい。
ea-performance-each-20180630グラフ上のポイントが示す対象
このグラフは2018年6月末時点でのフォワードテスト結果を基に、対象とするEAの勝率を横軸に、利損比を縦軸にプロットしたものです。散布図といわれるグラフですね。
グラフ中、各EAは「all」、「60」、「30」と表示された3点を結ぶ折れ線で示されています。「all」で示される点は、 GogoJungleが公開しているフォワードテストのその時点(本グラフであれば2018年6月末時点)での全ての取引結果から勝率と利損比を算出し、プロットしています。
「60」であれば最近60回の取引結果から勝率と利損比を算出したものです。同様に「30」であれば最近30回の取引結果からの算出となります。ですから「30」や「60」で示されるポイントは、そのEAのより最近の状況を表しているわけです。 とまあここまでは、期待値と取引回数での説明と全く一緒です。
ですから同じ例えでFlashes_USDJPY(黄緑のキー)の最近60回の取引平均では、勝率が72%となります(グラフ上では横軸0.72の位置にプロットされています)。また利損比は0.88でした。
利損比とプロフィットファクター
ここで利損比とは何かをおさらいしましょう。勝った取引で得られる平均利益額と負けた取引で失う平均損失額の比、これが利損比です。よく似た指標にプロフィットファクター(PF)があります。総利益と総損失の比ですね。PFは投資(というかトレード)を行う上でとても重要な指標です。利損比とPF、何が違うのでしょうか。
例えばある一年間で100回の取引を行ったEAがあります。その100回には勝ち(利益が出た場合)もあれば、負け(損失が出た場合)もあるでしょう。その100回の取引で60万円の利益と40万円の損失が発生したとします。この場合のPFは、60万円÷40万円=1.5となります。
では、利損比を考えてみましょう。利損比は、この仮定では算出できません。一年間で60万円の利益が出たわけですが、何回の取引でこの利益が達成されたかを見ます。仮に20回の取引で達成したとしましょう。そうすると勝った取引一回当たりの利益額(平均利益額)は、60万円÷20回=3万円/回です。
次いで負けた場合です。100回のうち20回で利益が出たわけですから、損失が出た取引は残りの80回ですね。負けた取引一回当たりの損失額(平均損失額)は、40万円÷80回=0.5万円/回です。従って利損比は、3万円/回÷0.5万円/回=6となります。また勝率は100回の取引のうち20回が勝ち取引であったので、20回÷100回=0.2ですね。
この例でわかるように、利損比を計算するためにはPFの算出に必要な利益と損失それぞれの総額に加え、それら総額が何回の勝ち取引もしくは負け取引で達成されたかという勝率データが必要となります。利損比と勝率の値の組み合わせでPFの値が規定されるといってもいいかもしれません。このことは何を意味するのでしょうか。
グラフの意味するものは
利損比と勝率の値の組み合わせでPFの値が規定される。この関係を使えば、利損比と勝率の値の組み合わせが同じPF値となる点を結んで線を描くことができます。もう一度グラフを見て下さい。「利益=損失」及び「0.7利益=損失」とキーを付した曲線が描かれています。この曲線がその線に当たります。
この線をもう2本、破線で加えたグラフを以下に示します。「利益=損失」の線では 、利益/損失=1、すなわちこの線上ではPFは常に1となります。また、この線よりも下にプロットされたEAはPFが1未満、取引総額はマイナスとなります。同様に「0.7利益=損失」では、利益/損失=1/0.7≒1.43、 「0.5利益=損失」では、利益/損失=1/0.5=2、「0.33利益=損失」では、利益/損失=1/0.33≒3です。
ea-performance-each-20180630-2グラフ上では、Flashes_USDJPY、fMAX5P、fMAXed、ScalUSDJPYの4EAが0.5利益=損失の線上付近にプロットされています。これは、それぞれのPFが2前後であることを示しています。しかし、それぞれの利損比と勝率の値の組み合わせは相応に異なることがグラフから見て取れます。そう、同じPFを示すEAであっても、取引の挙動は異なるのです。このことを、事例を用いて説明しましょう。
EAの取引の性格の違いを明確化
利損比とプロフィットファクターの違いを説明する際に、PFが1.5のEAを事例として用いました。PFが同じ1.5のEAで、今度は別の仮定を置いてみましょう。今回は年間60万円の利益を80回の取引で達成します。勝った取引一回当たりの利益額(平均利益額)は、60万円÷80回=0.75万円/回、負けた取引一回当たりの損失額(平均損失額)は、40万円÷20回=2万円/回です。利損比は、0.75万円/回÷2万円/回=0.375ですね。また勝率は、80回÷100回=0.8となります。
このEAと先の事例のEA、どちらもPFは1.5ですが、その性格、挙動は全く異なりますよね。先の事例のEAは、勝率は低いけれども(0.2でした)勝つときは大きく勝つ(勝ちは3万円、負けは0.5万円)、「利大損小低勝率」EAです。一方で後の事例のEAは、大きくは勝たないけれど(勝ちは0.75万円、負けは2万円)勝率は高い(0.8でした)、「利小損大高勝率」EAです。
PFの数字はこの二つのEAの違いを何も語りません。しかし勝率と利損比を軸にしてグラフ化すれば、その違いは明確に描き出されます。これが利損比と勝率を計算しグラフ化する理由です。前項で説明した期待値と取引回数を使ったグラフでは、利回りをベースにEAの性格の違いを表しました。勝率と利損比のグラフは利回りを達成する個々の取引の性格の違いを表します(利回りについては何も語らないことに注意して下さい)。
取引の分散を可能とするポートフォリオの構築を目指す上で、EAの個々に行われる取引の性格の違いを認識することも重要です。このグラフはそのたあめの有効な判断ツールになっています。